チェーン・オブ・ソート(CoT)とは?AIの精度を劇的に向上させる思考の連鎖を徹底解説

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チェーン・オブ・ソート(Chain of Thought, CoT)とは?

チェーン・オブ・ソート(Chain of Thought、CoT)とは、AI、特に大規模言語モデル(LLM)が複雑な問題やタスクに取り組む際に用いられるプロンプティング技術です。 日本語では「思考の連鎖」と訳されます。

この技術は、AIに最終的な答えだけを直接出力させるのではなく、答えに至るまでの中間的な思考プロセスをステップバイステップで文章化させるのが大きな特徴です。 人間が難しい問題を解くときに、論理的な手順を一つずつ考えて結論を導き出すプロセスをAIに模倣させるアプローチです。

例えば、算数の文章問題に対して、単に「答えは6個です」と出力するのではなく、「2人がそれぞれ3個のリンゴを持っているので、2×3で合計6個になります」といったように、計算過程を言語化させます。 これにより、AIはより論理的に問題を分解して考えることが可能となり、最終的な回答の精度が向上します。

なぜ今チェーン・オブ・ソートが重要視されているのか?

チェーン・オブ・ソートが今、非常に重要視されている背景には、AI、特に大規模言語モデル(LLM)の能力に対する期待が高まっていることがあります。AIが単なる情報検索ツールから、より複雑な思考や推論が求められるパートナーへと進化する中で、その回答の精度と信頼性をいかに高めるかが大きな課題となっています。

CoTは、この課題に対する強力な解決策として注目を集めています。AIに思考のプロセスを説明させることで、複雑な問題解決能力や論理的推論能力が飛躍的に向上することが研究によって示されています。 実際、難しいタスクを集めたベンチマークテストでは、CoTを用いることでAIの性能が人間を上回るケースも報告されています。

さらに、CoTはAIの「ブラックボックス問題」を緩和する点でも重要です。AIがなぜその結論に至ったのか、その思考の過程が可視化されるため、私たちは回答の妥当性を判断しやすくなります。 この透明性の向上は、AIを医療や金融、法律といった専門的な分野で活用していく上で不可欠であり、AIへの信頼性を高める上で大きな役割を担っています。

チェーン・オブ・ソートの仕組みを分かりやすく解説

チェーン・オブ・ソート(CoT)の仕組みは、非常にシンプルです。AIに対して、問題解決のプロセスを段階的に、つまり「ステップバイステップで考える」ように指示を与えることで機能します。 これにより、AIは最終的な答えに飛びつくのではなく、人間のように論理的な手順を踏んで結論を導き出します。

例えば、算数の「カフェで、ロジャーは23個のカップケーキを持っています。彼は15個のカップケーキを焼き、さらに6個のカップケーキを買いました。彼はカップケーキを何個持っていますか?」という問題を考えてみましょう。

CoTを使わない場合、AIは問題文の数字を単純に処理しようとして、誤った答えを出してしまう可能性があります。しかし、CoTプロンプトを用いると、AIは次のような思考の連鎖を生成します。

  1. まず、ロジャーが最初に持っていたカップケーキの数は23個です。
  2. 次に、彼は15個焼いたので、23 + 15 = 38個になりました。
  3. さらに6個買ったので、38 + 6 = 44個になります。
  4. したがって、最終的にロジャーは44個のカップケーキを持っています。

このように、CoTは複雑なタスクをより小さく扱いやすいステップに分解させます。 各ステップで論理的な推論を行うことで、AI自身が思考を整理し、誤りを減らしながら、より正確な最終回答にたどり着けるようになります。

CoTプロンプティングの主要な種類

チェーン・オブ・ソート(CoT)を実践するためのプロンプティング手法には、大きく分けて2つの主要な種類があります。それが「ゼロショットCoT」と「フューショットCoT」です。

これらの手法は、AIに思考の連鎖を促すという目的は同じですが、そのアプローチが異なります。タスクの複雑さや、どれだけ手間をかけられるかに応じて使い分けることが重要です。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて最適な手法を選ぶことで、CoTの効果を最大限に引き出せます。

ゼロショットCoT:事前情報なしで「ステップバイステップで考えて」と指示する手法

ゼロショットCoTは、AIに思考の具体例(手本)を一切与えずに、CoTを実行させる最も手軽な手法です。プロンプトの最後に「ステップバイステップで考えてください(Let’s think step by step)」のような、思考のプロセスを促す一文を追加するだけで機能します。

この手法の最大のメリットは、そのシンプルさにあります。複雑なプロンプトを設計する必要がなく、誰でも簡単に試せます。事前の準備なしで、AIに自己解決的に問題のステップを分解させ、推論を行わせることが可能です。

ただし、手本がないため、AIがどのように思考を展開するかはモデルの能力に大きく依存します。非常に複雑な問題や、特定の思考パターンが求められるタスクでは、次に紹介するフューショットCoTの方が高い精度を期待できる場合があります。

フューショットCoT:いくつかの手本(思考の例)を提示してAIを導く手法

フューショットCoTは、プロンプトの中に、問題とその思考プロセス、そして最終的な答えをセットにした手本(exemplar)をいくつか含める手法です。 AIは提示された手本を参考に、新しい問題に対しても同様の思考の連鎖を生成しようと試みます。

例えば、算数の文章問題を解かせたい場合、いくつかの異なる文章問題について、その解き方をステップバイステップで記述した例をプロンプトに記載します。これにより、AIはどのような形式で、どの程度の詳細さで思考プロセスを記述すればよいかを学習し、タスクにより適した質の高い回答を生成できるようになります。

この手法は、ゼロショットCoTに比べて精度の高い回答が期待できる一方で、質の良い手本を準備する手間がかかるという側面もあります。 特定のタスクで最高のパフォーマンスを引き出したい場合に特に有効な手法です。

【実践編】ChatGPTで使えるCoTプロンプトの例文とコツ

チェーン・オブ・ソートの理論を理解したら、次はいよいよ実践です。ここでは、日常的に利用者の多いChatGPTでCoTを効果的に使うための、具体的なプロンプトの例文と、より精度を高めるためのコツをご紹介します。

CoTは、算数のような論理的な問題解決だけでなく、ビジネスメールの作成やブログ記事の構成案作りといった、よりクリエイティブなタスクにも応用できます。これから紹介する例文を参考に、ぜひあなたの目的に合わせてプロンプトをカスタマイズしてみてください。

基本的な問題解決のプロンプト例(算数問題など)

算数問題は、チェーン・オブ・ソートの効果が最も分かりやすく現れるタスクの一つです。AIに計算の過程を一つずつ説明させることで、計算ミスを減らし、正答率を大幅に向上させられます。

【プロンプト例:ゼロショットCoT】

リンゴが15個入ったカゴが3つあります。そこから8個のリンゴを食べました。残りのリンゴは何個ですか?

ステップバイステップで考えて、答えを導き出してください。

このプロンプトのポイントは、最後に「ステップバイステップで考えて」という魔法の言葉を加えるだけという手軽さにあります。これにより、AIは思考のプロセスを言語化しながら回答を生成します。

【プロンプト例:フューショットCoT】

Q: 公園に子供が5人いました。そこに3人来て、2人帰りました。今、公園には何人いますか?
A: 最初に5人いました。3人来たので 5 + 3 = 8人になりました。2人帰ったので 8 - 2 = 6人になりました。答えは6人です。

Q: 1冊120円のノートを4冊と、1本50円の鉛筆を3本買いました。合計金額はいくらですか?
A:

フューショットCoTでは、上記のように「問題(Q)」と「思考プロセスを含んだ答え(A)」のペアを例として提示します。これにより、AIは回答のフォーマットを学習し、より期待に近い形で思考の連鎖を生成するようになります。

複雑な文章作成のプロンプト例(ビジネスメール、ブログ記事など)

チェーン・オブ・ソートは、論理的な問題解決だけでなく、構成や流れが重要な文章作成タスクにも非常に有効です。 例えば、ビジネスメールやブログ記事を作成する際に、いきなり完成形を求めるのではなく、CoTを使って段階的に考えさせることで、質の高い文章を作成できます。

【プロンプト例:ブログ記事の構成案作成】

「AIの未来」というテーマでブログ記事を作成したいです。以下の手順に従って、ステップバイステップで構成案を作成してください。

1. ターゲット読者を定義する
2. 記事のゴール(読者に何を伝えたいか)を設定する
3. 導入、本文、結論の大きな流れを考える
4. 本文で取り上げるべきトピックを3〜5個リストアップする
5. それぞれのトピックでどのような内容を記述するか、簡単な箇条書きでまとめる
6. 全体の構成案を提示する

このように、思考してほしい手順を具体的に指示することで、AIは論理的で一貫性のある構成案を作成してくれます。 これは、商品の魅力を伝えるマーケティング文の作成など、他のビジネスシーンでも応用できます。

【プロンプト例:ビジネスメールの作成】

来週のプロジェクト定例会の日程変更をお願いするメールを作成したいです。以下の思考プロセスを経て、丁寧なビジネスメールを作成してください。

1. まず、メールの目的を明確にする(日程変更のお願い)。
2. 次に、日程変更が必要な理由を簡潔に説明する。
3. 続いて、新しい日程の候補を複数提示する。
4. 最後に、相手への配慮と感謝の言葉を添える。

このプロンプトでは、メール作成に必要な要素をステップとして提示しています。AIはこれらのステップに従うことで、要点が整理され、相手に意図が伝わりやすい、分かりやすい文章を作成できます。

CoTを効果的に使うための3つのコツ

チェーン・オブ・ソート(CoT)は非常に強力なテクニックですが、その効果を最大限に引き出すためにはいくつかのコツがあります。ここでは、特に重要となる3つのポイントをご紹介します。

1. シンプルで明確なステップに分解する
AIに考えさせたいプロセスは、できるだけシンプルで明確なステップに分割することが重要です。 複雑な指示や曖昧な表現は、AIの混乱を招き、かえって精度が低下する原因となります。人間がタスクを処理する手順をイメージしながら、具体的な指示を与えることを心がけましょう。

2. 適切な言葉で思考を促す
ゼロショットCoTで最も有名なのは「ステップバイステップで考えて」というフレーズですが、タスクによっては他の表現が有効な場合もあります。 例えば、「理由を述べてください」「論理的な手順を説明してください」「まず〇〇について考え、次に△△について検討してください」といったように、目的に合わせて思考を促す言葉を使い分けることが効果的です。

3. 出力形式を指定する
AIに思考プロセスをどのように出力してほしいかを具体的に指定することも有効です。例えば、「箇条書きで説明してください」「まず結論を述べ、その後に理由を3点挙げてください」のようにフォーマットを指定することで、得られる回答がより整理され、人間にとって理解しやすいものになります。

チェーン・オブ・ソートのメリット

チェーン・オブ・ソート(CoT)を活用することには、多くのメリットがあります。AIの性能を向上させるだけでなく、私たち人間とAIとの関わり方にも良い影響を与えます。ここでは、CoTがもたらす主な3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。

回答の論理的整合性と精度が向上する

チェーン・オブ・ソート(CoT)の最大のメリットは、AIの回答における論理的な整合性と精度が大幅に向上することです。 複雑な問題を小さなステップに分解し、一つひとつ順を追って処理させることで、AIはより慎重かつ論理的に思考を進めることができます。

このステップバイステップのアプローチにより、AIは途中の思考プロセスで矛盾や誤りを発見しやすくなります。 結果として、最終的な結論に直接ジャンプしようとする場合に比べて、間違いが少なく、より信頼性の高い回答を生成することが可能になります。

特に、算数の文章問題や論理パズルのような、多段階の推論を必要とするタスクにおいて、CoTは顕著な効果を発揮します。 実際に、CoTを用いることでLLMの正答率が劇的に改善されたという研究結果も報告されています。

AIの思考プロセスが可視化され透明性が高まる

チェーン・オブ・ソート(CoT)のもう一つの重要なメリットは、AIがどのようにしてその結論に至ったのか、その思考のプロセスが可視化される点です。 これにより、AIの応答に対する透明性が格段に向上します。

従来のAIでは、最終的な答えだけが提示されるため、なぜその答えになったのかが分からず「ブラックボックス化」してしまうことが課題でした。しかし、CoTを使えば、AIの思考の連鎖を人間が追跡することができます。 これにより、もし回答に誤りがあった場合でも、どのステップで間違えたのかを特定し、修正しやすくなります。

この透明性は、ユーザーに安心感を与え、AIの回答に対する信頼性を高める上で非常に重要です。 特に、医療や金融、法律など、判断の根拠が重視される専門分野でのAI活用において、説明責任を果たすための不可欠な要素となります。

複雑で多段階のタスクに対応できる

チェーン・オブ・ソート(CoT)は、複数のステップや複雑な論理を必要とするタスクへの対応能力をAIに与えます。 一度に全体を処理しようとすると失敗しやすい問題でも、CoTを用いてタスクを管理しやすい小さな部分に分解することで、AIは一つひとつ着実に処理を進められます。

例えば、以下のようなタスクでCoTは特に有効です。

  • 長文の要約:文章の主要なポイントを段階的に抽出し、それらを統合して要約を作成する。
  • ビジネス戦略の立案:市場分析、競合調査、自社の強み・弱みの評価といった各ステップを経て、論理的な戦略を構築する。
  • プログラミングのコード生成:要件を理解し、関数の設計、具体的なコーディング、エラー処理といった手順を踏んでコードを完成させる。

このように、CoTはAIがより高度で多面的な課題に取り組むための強力なフレームワークを提供します。これにより、AIの応用範囲は単純な質疑応答から、より実践的で複雑な問題解決へと大きく広がります。

チェーン・オブ・ソートのデメリットと注意点

チェーン・オブ・ソート(CoT)はAIの能力を飛躍的に向上させる強力な手法ですが、万能というわけではありません。その限界や注意点を理解しておくことで、より効果的にCoTを活用し、潜在的なリスクを避けることができます。ここでは、CoTを利用する際に知っておくべきデメリットや注意点について解説します。

大規模な言語モデルでないと効果が薄い可能性がある

チェーン・オブ・ソート(CoT)の効果は、使用するAIモデルの規模、つまりパラメータ数に大きく依存する傾向があります。 一般的に、CoTは数十億以上のパラメータを持つ大規模言語モデル(LLM)で特に有効に機能するとされています。

これは、CoTがAIの持つ潜在的な推論能力を引き出す手法であるためです。 そもそも高度な推論能力を持たない小規模なモデルに対してCoTを適用しても、期待するような性能向上は見られないことがあります。それどころか、かえって回答の質が低下してしまうケースも報告されています。

CoTは、モデルの規模や複雑性がスケールアップするにつれて現れる「創発的能力」の一つと考えられています。 そのため、CoTを試す際は、十分な性能を持つ大規模なモデル(例えば、GPT-3.5以降のモデルなど)を使用することが推奨されます。

プロンプトの設計が複雑になる場合がある

チェーン・オブ・ソート(CoT)を効果的に機能させるためには、プロンプトの設計に工夫が求められることがあります。特に、フューショットCoTを用いる場合、質の高い手本(思考の例)を複数用意する必要があり、その作成には時間と手間がかかります

手本の質が低いと、AIがそれを誤って学習してしまい、かえって回答の精度が下がってしまう可能性もあります。どのような思考プロセスがそのタスクにとって最適なのかを人間が理解し、それを的確に示す手本を作成しなければなりません。

また、ゼロショットCoTであっても、単に「ステップバイステップで考えて」と加えるだけでは不十分な場合があります。 問題が複雑になるほど、AIが正しく問題を分解し、論理的なステップを踏めるように、より具体的で明確な指示をプロンプトに含める必要が出てくるでしょう。

誤った思考の連鎖(ハルシネーション)を助長する可能性

チェーン・オブ・ソート(CoT)はAIの論理性を高める一方で、一度思考のプロセスで誤りが生じると、その誤りを前提として後の思考が続いてしまうというリスクも抱えています。これは、誤った事実や論理の飛躍(ハルシネーション)を助長し、最終的に大きく間違った結論に至る可能性があることを意味します。

例えば、ある計算ステップで間違いを犯した場合、CoTはその間違った計算結果を使って次のステップに進んでしまいます。思考のプロセスが詳細に記述されるため、一見すると論理的に見えても、その出発点が間違っているために全体として破綻した回答になってしまうのです。

最近の研究では、CoTが見かけ上の推論能力を生成しているだけで、真の論理的整合性を保証するものではないという指摘もあります。 そのため、CoTによって生成された思考プロセスを鵜呑みにせず、その内容が事実に基づいているか、論理的に正しいかを批判的に検証することが非常に重要です。

CoTの応用例|ビジネスから日常まで

チェーン・オブ・ソート(CoT)は、単なる実験的な技術ではなく、すでに私たちのビジネスや日常生活の様々な場面で応用できる非常に実践的なテクニックです。CoTを活用することで、AIをより賢いパートナーとして、複雑な問題解決や創造的なタスクに役立てられます。ここでは、具体的な応用例をいくつかご紹介します。

複雑なビジネス戦略の立案

ビジネス戦略の立案は、市場の動向、競合の状況、自社のリソースなど、多岐にわたる要素を考慮する必要がある複雑なタスクです。 こうした場面でチェーン・オブ・ソート(CoT)は非常に有効です。

例えば、AIに対して以下のようなステップで思考するように指示することができます。

  1. 市場分析:ターゲット市場の規模、成長率、主要なトレンドを分析する。
  2. 競合分析:主要な競合他社の強みと弱みをリストアップする。
  3. 自社分析(SWOT分析):自社の強み、弱み、機会、脅威を整理する。
  4. 戦略オプションの生成:上記の分析結果に基づき、考えられる戦略の選択肢を複数提案する。
  5. 戦略の評価と選択:各選択肢のリスクとリターンを評価し、最も有望な戦略を特定する。

このように、戦略立案のプロセスを段階的に分解し、論理的に進めるようAIに指示することで、網羅的で一貫性のある戦略の草案を得ることが可能になります。 AIが生成した思考プロセスを確認することで、人間はより深い洞察を得たり、見落としていた視点に気づいたりすることができるでしょう。

プログラミングのコード生成やバグ修正支援

プログラミングの世界でも、チェーン・オブ・ソート(CoT)は強力なアシスタントとして機能します。単に「〇〇するコードを書いて」と指示するだけでなく、CoTを用いて設計思想や実装のステップを考えさせることで、より質の高いコードを得られます。

【コード生成の例】
「ユーザー登録フォームを作成したい」という要望に対し、AIに以下のような思考プロセスをたどらせます。

  1. まず、必要な入力項目(例:氏名、メールアドレス、パスワード)を定義する。
  2. 次に、HTMLでフォームの基本構造を設計する。
  3. 続いて、入力されたデータが正しい形式か検証する(バリデーション)機能をJavaScriptで実装する方法を考える。
  4. 最後に、ユーザー体験を向上させるためのフィードバック(例:エラーメッセージの表示)を追加する方法を検討する。

このように段階を踏ませることで、単なるコードの断片ではなく、なぜそのように設計するのかという理由や背景まで含んだ、より実践的な回答を引き出せます

【バグ修正の例】
エラーメッセージを提示し、「このバグの原因と修正方法をステップバイステップで考えてください」と指示します。AIは、エラーメッセージの解読、関連するコード部分の特定、考えられる原因の列挙、そして具体的な修正案の提示というように、論理的に問題解決プロセスを進めてくれます。

長文の要約や校正支援

長いレポートや記事の内容を短時間で把握したい場合や、自身の書いた文章をより良くしたい場合にも、チェーン・オブ・ソート(CoT)は役立ちます。 AIに段階的な思考を促すことで、より精度と質の高い要約や校正結果を得られます。

【長文の要約】
単に「この記事を要約して」と依頼するのではなく、以下のようにCoTを活用します。

この記事について、以下のステップで要約を作成してください。
1. まず、記事全体の主題(テーマ)を一文で述べてください。
2. 次に、記事の主要な論点や主張を3つの箇条書きで抜き出してください。
3. 最後に、それらを統合して、300字程度の簡潔な要約文を作成してください。

このプロンプトにより、AIは文章の構造を論理的に分析し、重要なポイントを的確に捉えた質の高い要約を生成できます

【文章の校正支援】
校正においても、「誤字脱字をチェックし、文章をより分かりやすくするための改善案を、理由とともにステップバイステップで提案してください」といった指示が有効です。AIは、文法的な誤りの指摘だけでなく、「この段落は結論を先に述べた方が分かりやすい」「専門用語をより平易な言葉に置き換えるべき」といった、構成や表現に関する踏み込んだ提案を、その理由とともに示してくれます。

チェーン・オブ・ソートの発展的な技術

チェーン・オブ・ソート(CoT)は、AIの推論能力を向上させるための基礎的な技術として確立されましたが、研究者たちはその可能性をさらに押し広げるべく、様々な発展的な手法を開発しています。これらの技術は、CoTのアイデアをベースにしながら、より複雑で高度な問題解決を目指すものです。ここでは、その中でも特に注目されている3つの技術をご紹介します。

Self-Consistency(自己整合性):複数の思考経路から多数決で回答を選ぶ手法

Self-Consistency(自己整合性)は、チェーン・オブ・ソート(CoT)をさらに強化するための手法です。このアプローチでは、同じ問題に対して、AIに複数の異なる思考の連鎖(思考経路)を生成させます

人間が難しい問題を考えるときに、別のアプローチや解き方を試してみるのに似ています。AIにも同様に、多様な方法で問題に取り組ませるのです。そして、生成された複数の思考経路が導き出した最終的な答えを集計し、その中で最も多くの経路がたどり着いた答え(多数決)を、最終的な回答として採用します。

一つの思考経路では間違いを犯してしまう可能性があっても、複数の異なる経路からアプローチすることで、その間違いが相殺され、より頑健で信頼性の高い答えにたどり着く確率が高まります。この手法は、特に答えが一つに定まるような算数問題や論理クイズなどで高い効果を発揮することが知られています。

Tree of Thoughts(ToT):思考を木構造に分岐・評価し、最適な答えを探す手法

Tree of Thoughts(ToT)は、チェーン・オブ・ソート(CoT)が一本の思考の鎖であるのに対し、思考を木の枝のように複数に分岐させながら、最適な答えを探していくより高度な手法です。

問題解決の各ステップで、AIは複数の異なる次の手を考え出します。これが思考の「分岐」です。そして、それぞれの分岐した思考がどれだけ有望かを自己評価し、見込みのない思考の枝は切り捨て、有望な枝をさらに深く探求していきます。このプロセスを繰り返すことで、広大な思考の可能性の中から、最も正解に近い経路を見つけ出します。

ToTは、計画立案や文章生成のような、唯一の正解がなく、複数の選択肢を比較検討する必要がある、より複雑で探索的なタスクに適しています。CoTが直線的な思考であるとすれば、ToTはより広範囲を探索する網羅的な思考アプローチと言えるでしょう。

Auto-CoT:CoTプロンプトの生成を自動化する手法

Auto-CoTは、フューショットCoTの課題であった「手本の準備の手間」を解決するために考案された手法です。その名の通り、チェーン・オブ・ソート(CoT)の手本となるプロンプトをAI自身に自動で生成させるという画期的なアプローチです。

この手法では、まずAIにゼロショットCoT(例:「ステップバイステップで考えて」)を用いて、いくつかの問題に対する思考の連鎖を生成させます。こうして自動的に生成された「問題」と「思考の連鎖」のペアを、フューショットCoTのための手本として利用します。

Auto-CoTは、人間が手本を作成する手間を省きながら、ゼロショットCoTの手軽さとフューショットCoTの性能を両立させることを目指しています。これにより、CoTの活用がより手軽で効率的になることが期待されています。

まとめ:チェーン・オブ・ソートを理解してAIを使いこなそう

この記事では、AIの精度を劇的に向上させるプロンプティング技術「チェーン・オブ・ソート(Chain of Thought, CoT)」について、その仕組みから具体的な活用法、さらには発展的な技術までを網羅的に解説しました。

CoTは、AIに単に答えを出させるのではなく、「なぜその答えに至ったのか」という思考のプロセスを言語化させることで、複雑な問題に対する推論能力を飛躍的に高める手法です。 回答の精度が向上するだけでなく、AIの思考プロセスが可視化されることで透明性が高まり、私たちはその回答をより深く理解し、信頼することができるようになります。

ゼロショットCoTやフューショットCoTといった基本的な使い方から、ビジネス戦略の立案やプログラミング支援といった実践的な応用まで、CoTの可能性は無限大です。もちろん、モデルの規模による効果の違いや、誤った思考を助長するリスクといった注意点も存在しますが、それらを理解した上で活用すれば、CoTはあなたにとって最強の武器となるでしょう。

AIとの対話は、もはや単なる「質問と回答」のやり取りではありません。CoTを使いこなし、AIに「考えさせる」ことで、これまで以上に高度で創造的なパートナーとして、その真価を引き出しましょう。

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